人間と関わるとき「感情転移」を心理療法的に理解してないと大変危険な心理療法になります。例えば、相談者が相談員に、大きな声で怒鳴ったり、否定するような敵意や嫉妬をぶつけてくることがあります。この時に相談員がフック(留め金)になることはあっても、関わりが全て悪いと言えない場合があります。「転移」とは、相談員が「過去の重要な人物」(両親や家族のことが多い)に対する敵意や恨みや自分にないものを持っている怒りを、相談員にぶつけるとき、幼少期からの封鎖された両親への恨みがが移行したと考えると、心理療法が前進します。この理解がないと単に「相談員の力量不足だ」とか「相談者はダメだ」となって「悪者探し」で一向に相談が進みません。
大事なことは「両親や家族にぶつけたかった敵意や嫉妬を、本当にぶつけたかった相手を相談員に見立てて激しい感情をぶつける」(感情転移=フロイトやユングが提唱)ととらえると、「私が受け入れなかったからだ。私の対応が悪かったからだ。」と自分をむやみに責めて間違った方向にいくことを阻むことができるようになります。強い感情の投げかけ(転移)の時は、すぐに反応せず「受容し見守る」困難な時間を覚悟しなければ、自己治癒力は望めません。
「感情転移」という相談業務のイロハを理解してないのは、自動車免許がない人が大型トラックで高速道路を走ってるのと同じくらい危険な行為だと、肝に銘ずるべきです。