心理カウンセラー佐藤照貴

                  (月〜土曜日9:00〜17:00)

僕が「へえ〜」とかいうとね、ブワーッと話が続いてきてね。それで、曲がり忘れたりね(笑)【カウンセリングの神髄】

  故・河合隼雄(日本におけるユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。文化庁長官を務める)さんと茂木健一郎(脳科学者・脳と心の関係「心脳問題」についての研究)さんの対談集で こんな話が出てきます。

  • 河合: ときどき起きるのは、僕の乗ったタクシーの運転手さんが、むちゃくちゃに身の上話なんか始めるんですよ
  • 茂木: エーッ! そりゃ おもしろい話ですね(笑)
  • 河合: タクシーに乗るでしょう。すると「私は、本当は別の仕事をしていたんですよ」とか話しだすんです。それで僕が「へえ〜」とかいうとね、ブワーッと話が続いてきてね。それで、曲がり忘れたりね(笑)。まるっきり違うとこに行ってたりするんです。そこでメーターを倒して、「ここからタダで行きますから」とかいって(笑)。そのあいだ、もうずっと、身の上話。
  • 茂木: 河合先生ってわかってのことですか。
  • 河合: いやいや、全然知らんのですよ
  • 茂木: わからないで、なぜか身の上話をするんですか。
  • 河合: うん、しゃべりたくなってくる。だからこのごろタクシーに乗る時  は、こわい顔して乗ってるんですよ(笑)

   茂木健一郎氏曰く 「河合さんのカウンセリングは、カウンセラーがクライアントにアドバイスするのではなく、聞くことに始まり、聞くことで終わる」こんな感じです。その技の達人である河合さんが、タクシーで「へえ〜」とひとこと相槌を打つと、運転手さんの何かを刺激して話が止まらなくなってしまう。話に夢中で道を間違えてしまうということは、脳の中の普段と違う所が活性化しているのだと思います。「出典:こころと脳の対話より」